駐車場からゆっくり滑り出した車は、夜の街道をわたしの家の方面へと向かって走る。
 明日からまた一週間が始まる。そして週末は亮ちゃんのマンションに。あとどれくらい繰り返して亮ちゃんに逢えるんだろう・・・・・・。

 あてが無いのは本当は心細い。圧し潰さそうになったりもする。広大な砂漠に一人で放り出されて、ひたすら待っているだけでいいのかって。自分で道を探しに行くべきなんじゃないかって。
 もし今年が終わるまでに逢えなかったら。・・・わたしの中で強くなっている思いが一つあった。
 

 闇と流れる光りが織りなすコントラストを見つめてしばらく。

「・・・手塚」

 津田さんの声に振り向く。
 ハンドルを握ったままのポーカーフェイス。全く読めない先を待って今度は彼を見つめた。

「日下さんが戻らなかったらどうするつもりだ」
 
 おもむろに放たれたその言葉に驚いたのは。亮ちゃんが姿を消してこれまで一度も、津田さんが口にしなかったことだったから。

 亮ちゃんが帰ってこなかったら。

 考えたこともないって言ったら嘘になる。信じてるって言い聞かせながらそんな思いがもたげて、自分と戦ったりもしたの。

 『帰ってこなかったら』
 真っ直ぐ心に問いかけて。
 
「・・・・・・わたしから逢いに行きます」

 きっぱりと答えた。