「・・・明里はどうしてる」

一緒に廊下に出た日下さんは、相変わらず感情の読めない表情で訊く。

「とくに問題は」

「ならいい。・・・帰りに寄る」

それだけ言ってまた扉の向こうに消えた。

社長と日下さんが登社するのは週に3日程度だ。
小動物の世話をするようになってから、顔を合わせるごとに日下さんから“監査”が入る。・・・牽制とも言うよな。

ふっと溜息が漏れる。

「さて、・・・ね」

小動物には教えてやりたくない気分だ。
世話してやってるのは俺だってのに。たまにしか会いに来ない飼い主に飛びついて、泣きながら喜ぶ姿が目に浮かぶ。

そんなに恋しいのかよ。
一瞬わき上がった苦い感傷を、歩き出しながら飲み下してく。