「・・・あんたも大変な男に惚れてるよな」

リビングのソファに戻って、ぼそっと津田さんが低く呟いた。

「?」

「その首からぶら下がってるのも、ただの飾りじゃないだろうしな」

「??」

胸元の十字架が照明の反射を受けて鈍色の光りを放つ。

「なら俺も本気でかかるか」

最後のは誰に言うとも無しで。億劫そうに溜め息を吐き立ち上がった彼を、思い出して呼び止めた。 

「家賃ですけど本当に5万でいいんですか? 持って来たので先に渡そうと思って」

すると思ってもない答えが。

「ああ、それならもういい。日下さんから前払いで領収済みだ」

「えっ・・・?!」

目をぱちくり。いつ?! っていうか、どうして亮ちゃんが?!

「同居に関するあんたの経費は、すべて日下さんが持つって決まってる」

「でも、あのっっ」

「『飼い主』の当然の責任だそうだからな。あんたに拒否権はないだろ」