自分達で焼きながら食べるスタイルのお店で。彼が手際よくタネを混ぜ、手慣れた風に油を引くのを思いがけずに目を丸くした。  

「津田さん、お料理されるんですか?」

「独りだからな。そりゃするだろ」

 詰まらないことを訊くなって表情が、鉄板を挟んだ向かい側から返ってくる。

「でも料理上手な男子は人気らしいです」

「・・・・・・・・・・・・」

 思ったままを口にしたら、冷たい視線で黙殺された。
 ・・・今の褒めたんだけどなぁ。

 
 加減を見て綺麗にお好み焼きをひっくり返し、ソースを塗り、青のりや鰹節を豪快に振りかける。起こし金でざっくり切り分けて、わたしのお皿に乗せてくれるまで全く卒がない津田さんに。 
 
「いいダンナ様になりますね」

 はふ、と熱を逃がして、サクッふわっに舌鼓を打ちながら感心げに言うと。なんだかさっきより視線が冷たかった。

 ・・・えぇと、なんでだろう・・・・・・。
 




 津田さんは帰る頃合いになるとわたしにお手洗いを促して、いつもその間に会計を済ませてしまう。最初は、席に戻ったら本人も荷物も無いのを慌ててたけど、彼の流儀らしいので。店の外で煙草を咥え待ってくれている彼に、お礼を言う。

「餌をやるのも俺の仕事だ」

 素気ない返事も相変わらず。

「あんたは黙って食わされてろ」 


 ときどき。津田さんの目には、わたしがハムスターかハツカネズミに見えてるんじゃないかって。本気で思うの・・・亮ちゃん。