風呂から上がって女中に支えられるようにして部屋に入って来た美月は、すでに夕餉が運ばれていて酒を飲んでいた良夜の前で正座した。
「美味しそうですね…」
「精がつくよう主に肉料理を運ばせた。食え」
弱音を一切吐かない美月の清廉さが美しく、肉を頬張って美味しそうにしている笑顔を見るとほっとして、店で買った周辺の地形が書かれてある地図を広げた。
「この近くに人が建てた神社と滝がある。ただしすでにこの神社は廃屋で、人が参拝に来ている様子はないらしい。昔はここに九頭竜が祀られていたそうだ」
「ではもういつ九頭竜と出会ってもおかしくはないということですね」
「そうだ。雨竜の様子も気になる所だが、ここからはいつ襲われてもおかしくない。だからお前にはここで待機してもらいたい」
美月の箸が止まり、笑顔が消えると良夜をじろりと睨んで背筋を正した。
「私は雨竜の庇護者としてここまでついて来たのです。あの子の縁者と会うまでは引き下がりませんからね」
「そうは言ってもここに着くまでにかなり疲弊していたじゃないか。これからさらに深い森になってくるんだぞ」
「私のことはお構いなく。例え遅れたとしてもついて行きますから」
――なかなかに強情だ。
安全な場所に居てほしいから頼んでいるのに、美月は酒をぐいっと呷んでこちらの話を聞くつもりはないらしい。
「…もういい。勝手にしろ」
「!どこに行くのですか?」
「飲みに行く。女たちにちやほやされて英気を養って来る。お前は寝ていろ」
本当は傍に居たいのについ憎まれ口を叩いてしまった良夜は、茫然としている美月を残して舌打ちをしながら遊郭に向かった。
「美味しそうですね…」
「精がつくよう主に肉料理を運ばせた。食え」
弱音を一切吐かない美月の清廉さが美しく、肉を頬張って美味しそうにしている笑顔を見るとほっとして、店で買った周辺の地形が書かれてある地図を広げた。
「この近くに人が建てた神社と滝がある。ただしすでにこの神社は廃屋で、人が参拝に来ている様子はないらしい。昔はここに九頭竜が祀られていたそうだ」
「ではもういつ九頭竜と出会ってもおかしくはないということですね」
「そうだ。雨竜の様子も気になる所だが、ここからはいつ襲われてもおかしくない。だからお前にはここで待機してもらいたい」
美月の箸が止まり、笑顔が消えると良夜をじろりと睨んで背筋を正した。
「私は雨竜の庇護者としてここまでついて来たのです。あの子の縁者と会うまでは引き下がりませんからね」
「そうは言ってもここに着くまでにかなり疲弊していたじゃないか。これからさらに深い森になってくるんだぞ」
「私のことはお構いなく。例え遅れたとしてもついて行きますから」
――なかなかに強情だ。
安全な場所に居てほしいから頼んでいるのに、美月は酒をぐいっと呷んでこちらの話を聞くつもりはないらしい。
「…もういい。勝手にしろ」
「!どこに行くのですか?」
「飲みに行く。女たちにちやほやされて英気を養って来る。お前は寝ていろ」
本当は傍に居たいのについ憎まれ口を叩いてしまった良夜は、茫然としている美月を残して舌打ちをしながら遊郭に向かった。

