我が身を抱きしめてぎゅうっと目を閉じて恥じらっている美月の様はまさしく生娘で、今まで散々女遊びをしてきた自分が軽い気持ちで唇を重ねてもいいのかという思いに駆られた良夜は――

かぷりと鼻先に噛みついて手は壁についたまま顔を離した。


「…?」


「奪うなら全て奪う。だから今は見逃しておいてやる」


「!この…助平!」


鳩尾に強烈な拳を食らった良夜が思わず腹を押さえて悶絶すると、美月は辛くも良夜の魔の手から逃れて上がる息を堪えながら倒れ込んでいる良夜を睨んだ。


「庭を掃いてきます!お主はその間に帰るように!」


「ま、待て…」


しかしその制止する声も虚しく美月はどすどす足音を立てて外に出てしまい、良夜ははじめて女に抱いた感情にもやもやしていた。


「俺が女を抱かないなんて…」


自分で言うのもなんだが、数えきれないほど女を抱いてきた。

断られたこともなければ、誘われれば必ず誘いに乗ってきたのに――

そうやって良夜がもやもやしている頃、箒を持った美月は顔を真っ赤にしたまま泉に向かっていた。


「ああ私…危なかった…」


危うく身を任せそうになって自分でそれに驚いていた。

あんなきれいな男に言い寄られているのだから、断れるはずがないという相反する思いと戦いながら泉に着いた美月は、ぽかりと頭を出して近付いてきた雨竜にきょとんとされた。


「変な顔してる」


「こ、これは…ちょっと色々あったので…」


「あいつは?さっき来てたみたいだけど俺寝てて…」


「知りません!」


何故か怒られて雨竜が頭を引っ込めると、美月はへなへなと崩れ落ちて庭石に腰かけると、自身に言い聞かせた。


「駄目よ私…もっと強い意志を持って…!」


ぱしぱし両手で頬を叩いて気合を入れた。