千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-

程なくして幽玄町に着いた一行は、黎が百鬼夜行に行く時間になってしまったため、事の経緯を黎が帰ってくるまで待つことにした。

その間に桂と明日香はただただ見つめ合い、神羅はふたりの邪魔にならぬよう狼や雨竜と共にそんなふたりを見てにやにやしていた。

そして黎が百鬼夜行から戻って来ると、明日香は自らが病死した後桂が後を追うようにした自死したことを聞いて涙を落とした。

黎と神羅は桂が部屋に向かって起こった出来事を聞いて、自分たちと全く同じことを起きたことに驚いて何度も空を見上げた。


「なんというか…‟魂の座”で会った連中と皆顔見知りというわけか」


「朱い女と碧い男…ですよね。今ではあまり思い出せないんですが…何を願うのか訊かれて、それに答えたら魂が休まるまでここに居ろと言われて…」


前世で人だった神羅と明日香は彼らに会わなかったものの、次は黎や桂と同じ種族で転生したいと願い続けて最期を迎えたことを覚えていた。

黎は‟魂の座”で交わした会話を今も鮮明に覚えていて、縁側で皆と話していて思わず苦笑した。


「俺たちの家と縁が長く続くと言っていた。ということは…我が家の血が途絶えることはないということだ。桂、お前にも娘さん…明日香との間に子ができるぞ」


「子…」


前世では恵まれなかったその存在にふたりの目が輝いた。

これは早く祝言を挙げなければと張り切った黎と神羅は、早速その日のうちに桂が嫁を迎えるという触れを出して、女の百鬼たちをなおいっそう落胆させた。


「さあ桂、次はお前が幸せになる番だぞ」


黎と神羅は手を取り合って、前世では見れなかった息子の晴れ姿を想像して胸を詰まらせた。