それからというものの、黎は神羅を片時も離さず、百鬼たちをざわつかせた。

今まで会えなかった分の話は尽きず、縁側でずっとふたりで話し続けていたのだが――

黎が神羅を膝に乗せていつ唇が触れ合ってもおかしくないほどの近距離で見つめ合いながら話をしていたため、相談役の女が次代の当主に見初められたのだと分かったと当時に、現当主が彼らに言い渡した。


「相談役の美月殿は立場を下り、息子の妻となる。そして俺は隠居して息子に代を譲る。お前たちは身の振り方を考えるといい」


「若に嫁が!これは喜ばしい!」


男の百鬼たちは喜んだが、女の百鬼たちは皆一様に肩を落として涙にくれた。

神羅は生前から黎がとにかくもてはやされることを知っていたため、嫉妬心が燃え上がって黎にしがみつくように抱き着いて離れず、それをわざわざ見せつけた。


「おいおい、皆が見ているぞ」


「いいの。私の主さまはとにかく女に好かれることを重々知っています。今度こそ、誰にも譲らないわ」


女の百鬼たちがそんなふたりの姿を見せつけられてむせび泣く中、黎はついにやにやしてしまって神羅をむぎゅっと抱きしめた。


「親父の言う通り俺は代を継いでお前との約束を果たし続ける。お前の方こそ俺の居ぬ間に浮気なんかしたらどうなるか分かっているんだろうな?」


「男を殺す、でしょう?私とて同じよ、お主の目に触れる女…全てこの爪で引き裂いてやるわ」


あれから数日経ち、黎は日々神羅を抱いて愛し合い、神羅の身体の隅々を見分していた。

背中から正面、足のつま先まで神羅を愛しても飽き足らず、労わるように澪を愛した黎とは全く違う一面を見せていた。


「お前が建てた神社、まだ御所に存在するぞ。見に行くか?」


「本当に?それは言ってみたいけれど…行って大丈夫なのですか?」


「多分な。伊能がうまく手引きしてくれる。一緒に行こう」


汗に濡れた手で頬にふれてきて微笑んだ神羅をまた抱きしめて、情欲に耽った。