「まず神羅という名の女が転生した時に俺も転生させてほしい。あと鬼頭の家に再び生まれたい。容姿は…まあ鬼頭の家に生まれたら悪くはないだろうが、今より少し優しげな方がいいな、よく怖がられるから」


『…こいつ、かなり図々しいぞ』


朱い髪の女が呆れて金の髪の男の肩に手を置いた。

男は全くだと笑って何故だか誇らしげにしている黎の顔を見てまた腕を組んだ。


『他には?』


「澪はどこに行った?一目会いたい」


『それは悪いができない。お前に会うことで未練を残すと互いに正しく転生できないからな。お前は今から妻を同じ場所へ行くが途方もなく広い場所だ。だから探そうと思うな』


「分かった」


『それと…』


金の髪の男は再び一度上を仰ぎ見てふっと微笑した。


『お前はどうやら我々と縁があるらしい。転生しても必ず家を絶やすな』


「よく分からないが、分かった。ああそうだ、神羅も鬼族として転生させてくれ。俺たちは…人と妖だったから、共に長く生きられなかった」


『分かっている。重々言っておくが、神羅も澪も同じ場所に居る。皆それぞれが時をかけて魂を癒し、転生する時を待っている。お前もそうなる。この扉を通れば現世でのお前の生は終わる。悔いは…』


「ない。早く扉を通させてくれ」


『こいつやっぱり偉そうだな。通すのをやめるか?』


『馬鹿を言うな、あの方に俺が叱られるじゃないか。さあそろそろ行こう。もうお前の要求は呑まないぞ』


三人顔を見合わせて、くすくす笑った。

扉が開く――

まばゆく白い光を放ち、中を窺い知ることはできなかったが…黎はゆっくり扉を潜り、白い光に包まれた。


そして黎の生もまた、終わりを告げた。