胸が張り裂けそうなほどに、痛んだ。
喉が裂けて血が出るのではないかと思うほど何度も名を叫んで、ついに立てなくなって四つん這いになってもなお、名を叫んだ。
「良夜様、いやぁーっ!」
「みつ、き…」
やけに低い声が聞こえて一瞬でもはっと我に返った美月は、頭で籠の蓋を持ち上げて恐らくこちらを見ている雨竜の金色の目を見て足ががくがくしながらも立ち上がった。
「雨竜、良夜様が…良夜様が…っ」
「食わ、れた、の…?」
「お主の父が良夜様を…良夜様ぁーっ!」
――泣き崩れてうずくまった美月の前に、何か重たいものがぼとりと落ちた音がした。
「お、お前…雨竜なのか?」
「うん、俺だよ」
狼の驚いた声に涙で濡れながらも顔を上げた美月は――眼前に大蛇と言える大きさになっていた雨竜を見て涙が止まった。
「う、雨竜…?」
「俺、脱皮したんだ。箱の中に皮があるよ。九頭竜の皮はいろんな材料に使えるから取っといた方がいいよ」
その体長およそ二十尺――
小さな家程に大きくなっていた雨竜が今までどのようにしてあの籠の中に収まっていたのか、それも気にかかるところだったが…それよりも胴回りも随分立派になった雨竜は、少し鋭くなった眼光で乱青龍を見据えた。
「まだ間に合うよ」
「え…本当に…?」
「丸呑みしたのなら今から消化するだろうから、まだ間に合う。ねえ美月、俺にやらせて」
「な、何をするつもりなのですか…?」
美月の脇を通り過ぎる時、励ますように頬についた涙をぺろんと長い舌で舐め取った雨竜は、こちらに気付いて鎌首をもたげた父――乱青龍と対峙した。
「出来損ないが…脱皮はできたようだがお前は所詮それ止まり。さあ父の手にかかって死ね!」
「良夜を帰してもらう」
雨竜の顎ががくんと外れると、大きな口を開いた。
本来なら口腔の奥に炎が揺れているものだがそれはなく、赤い光が集束していく様が見て取れた。
「雨竜…?」
するとその光が一直線に乱青龍に向かい――真ん中の首が重たい音を立てて、落ちた。
喉が裂けて血が出るのではないかと思うほど何度も名を叫んで、ついに立てなくなって四つん這いになってもなお、名を叫んだ。
「良夜様、いやぁーっ!」
「みつ、き…」
やけに低い声が聞こえて一瞬でもはっと我に返った美月は、頭で籠の蓋を持ち上げて恐らくこちらを見ている雨竜の金色の目を見て足ががくがくしながらも立ち上がった。
「雨竜、良夜様が…良夜様が…っ」
「食わ、れた、の…?」
「お主の父が良夜様を…良夜様ぁーっ!」
――泣き崩れてうずくまった美月の前に、何か重たいものがぼとりと落ちた音がした。
「お、お前…雨竜なのか?」
「うん、俺だよ」
狼の驚いた声に涙で濡れながらも顔を上げた美月は――眼前に大蛇と言える大きさになっていた雨竜を見て涙が止まった。
「う、雨竜…?」
「俺、脱皮したんだ。箱の中に皮があるよ。九頭竜の皮はいろんな材料に使えるから取っといた方がいいよ」
その体長およそ二十尺――
小さな家程に大きくなっていた雨竜が今までどのようにしてあの籠の中に収まっていたのか、それも気にかかるところだったが…それよりも胴回りも随分立派になった雨竜は、少し鋭くなった眼光で乱青龍を見据えた。
「まだ間に合うよ」
「え…本当に…?」
「丸呑みしたのなら今から消化するだろうから、まだ間に合う。ねえ美月、俺にやらせて」
「な、何をするつもりなのですか…?」
美月の脇を通り過ぎる時、励ますように頬についた涙をぺろんと長い舌で舐め取った雨竜は、こちらに気付いて鎌首をもたげた父――乱青龍と対峙した。
「出来損ないが…脱皮はできたようだがお前は所詮それ止まり。さあ父の手にかかって死ね!」
「良夜を帰してもらう」
雨竜の顎ががくんと外れると、大きな口を開いた。
本来なら口腔の奥に炎が揺れているものだがそれはなく、赤い光が集束していく様が見て取れた。
「雨竜…?」
するとその光が一直線に乱青龍に向かい――真ん中の首が重たい音を立てて、落ちた。

