緑色の鱗は見るからに堅そうで、その鱗に全身をびっしり覆われていた。
名の通り頭は九つあり、四方を注意深く見回しては九つある尾を自在に振り回して周囲の木々を薙ぎ倒していた。
「あれの弱点はどこだ?」
『見ての通りあのでかい頭だ。ひとつ落とすだけで力の大半を削ぎ落すことができるが…問題は…』
真ん中の頭が大きな口を開けた。
その口腔の奥に炎が揺れているのを見た良夜は、反射的に大きく跳躍して立っていた場所から離れた。
するとその場所に轟音を伴った炎が撫でていって一瞬にして周囲は灰燼と化した。
ここで本来なら恐怖に怯えて腰でも抜かすところだが…
良夜は空中で一回転した後着地して目を輝かせて早口でまくし立てた。
「おい、今の見たか!?雨竜もあんなことができるようになるんだろうか」
『あ奴の言うように真に出来損ないならば無理だろうが…さて、ひとつであることが功を奏することもあろうな』
「え、どういう意味だ」
『雛はいつまでも雛ではないということよ。後は自分で考えよ』
ふんと鼻を鳴らした良夜は、再び喉を膨らまして炎を吐こうとしている乱青龍の背後に回って尾を斬ろうとしたが、これがまた七転八倒――ものすごい速さでぶんぶん振り回すため、近付くこともできない。
すると良夜は少し離れた場所に移動して、高台から乱青龍を観察することにした。
「来ないならこちらから行くぞ」
「まあ待て、俺くらいすぐ殺せるだろう。だがこっちはそうは行かない。もう一度言っておくが、殺したくはないんだ。九頭竜ともなれば神に等しき存在なんだろう?憐れみくらい与えてもいいんじゃないか?」
噓も方便――
天叢雲がまた含み笑いを漏らす中、乱青龍は口の中の炎をちらつかせながら鼓膜が破れそうなほどの大声で笑った。
「はははは!憐れみなど与えるものか!さあ息子を出せ!」
良夜は会話を交わしている中でも頭と尾の動きをずっと観察していた。
どちらを斬り落とした方が効率よく九頭竜の力を削げるか――
ぼそぼそと天叢雲と話し合い、天叢雲は良夜と言葉を交わす度に嬉しさで今まで溜め込んでいた妖気が漏れ出していた。
全力でやれる。
もう随分前にあの蔵から解き放ってくれたこの男とならば――やれる。
待ち望んでいた邂逅に、妖気は爆発的に増大し続けていた。
名の通り頭は九つあり、四方を注意深く見回しては九つある尾を自在に振り回して周囲の木々を薙ぎ倒していた。
「あれの弱点はどこだ?」
『見ての通りあのでかい頭だ。ひとつ落とすだけで力の大半を削ぎ落すことができるが…問題は…』
真ん中の頭が大きな口を開けた。
その口腔の奥に炎が揺れているのを見た良夜は、反射的に大きく跳躍して立っていた場所から離れた。
するとその場所に轟音を伴った炎が撫でていって一瞬にして周囲は灰燼と化した。
ここで本来なら恐怖に怯えて腰でも抜かすところだが…
良夜は空中で一回転した後着地して目を輝かせて早口でまくし立てた。
「おい、今の見たか!?雨竜もあんなことができるようになるんだろうか」
『あ奴の言うように真に出来損ないならば無理だろうが…さて、ひとつであることが功を奏することもあろうな』
「え、どういう意味だ」
『雛はいつまでも雛ではないということよ。後は自分で考えよ』
ふんと鼻を鳴らした良夜は、再び喉を膨らまして炎を吐こうとしている乱青龍の背後に回って尾を斬ろうとしたが、これがまた七転八倒――ものすごい速さでぶんぶん振り回すため、近付くこともできない。
すると良夜は少し離れた場所に移動して、高台から乱青龍を観察することにした。
「来ないならこちらから行くぞ」
「まあ待て、俺くらいすぐ殺せるだろう。だがこっちはそうは行かない。もう一度言っておくが、殺したくはないんだ。九頭竜ともなれば神に等しき存在なんだろう?憐れみくらい与えてもいいんじゃないか?」
噓も方便――
天叢雲がまた含み笑いを漏らす中、乱青龍は口の中の炎をちらつかせながら鼓膜が破れそうなほどの大声で笑った。
「はははは!憐れみなど与えるものか!さあ息子を出せ!」
良夜は会話を交わしている中でも頭と尾の動きをずっと観察していた。
どちらを斬り落とした方が効率よく九頭竜の力を削げるか――
ぼそぼそと天叢雲と話し合い、天叢雲は良夜と言葉を交わす度に嬉しさで今まで溜め込んでいた妖気が漏れ出していた。
全力でやれる。
もう随分前にあの蔵から解き放ってくれたこの男とならば――やれる。
待ち望んでいた邂逅に、妖気は爆発的に増大し続けていた。

