乱青龍(らんせいりゅう)――雨竜の父は長い間そう人々に呼ばれて親しまれてきた。
雨を求める人々に祀られて日々供物を絶やさなかった祠は時が経ち神社へと建て直されて大きくなり、乱青龍の力も強まっていった。
成体になってなお自我を保つことができた乱青龍は九頭竜の始祖の血統であり、人々に祀られなくとも強大な力を持っていたが、雨を少し降らせるだけで人々に感謝されるのは面白くもあり、滑稽でもあると思っていた。
それで神社の裏に滝を作ってやったのだが――水の心配が無くなった彼らは乱青龍が祀られている神社へ足を運ぶことが少なくなり、多少力は弱まったものの…
それよりも、人への恨みつらみは日々募っていった。
「貴様ら一族は人への施しが過ぎる。我ら妖が人を食うのは人より上位種であるからだ。連中が牛や豚を食うのと変わらんのだよ」
何千もの蛇は、一体一体が小さめではあるものの徒党を組んで襲い掛かられると厄介だった。
雨竜は腕を組んで楽しそうにしながらも金色の目だけは恨みに歪んでいるのを見て鼻で笑った。
「お前こそ祀られている時は人に憎しみなど抱かなかっただろう。それで人を食ったことはあるのか?」
「…」
乱青龍は沈黙したものの、人差し指をぴっと動かすと、蛇たちは一斉に良夜に詰め寄った。
『おい小僧』
「なんだ」
『我に力を寄越せ。そして横に薙いでみせろ。さすればあれらは消滅する』
「すごい数だぞ」
『太古の時代より存在する我の相手にもならん。さあやれ。すぐやれ』
天叢雲が力を要求すると、良夜は妖気を注ぎ込んで目に青白い炎を燈らせた。
「行くぞ」
『応』
短い息を吐き――はじめて天叢雲に力を注いで、薙いだ。
雨を求める人々に祀られて日々供物を絶やさなかった祠は時が経ち神社へと建て直されて大きくなり、乱青龍の力も強まっていった。
成体になってなお自我を保つことができた乱青龍は九頭竜の始祖の血統であり、人々に祀られなくとも強大な力を持っていたが、雨を少し降らせるだけで人々に感謝されるのは面白くもあり、滑稽でもあると思っていた。
それで神社の裏に滝を作ってやったのだが――水の心配が無くなった彼らは乱青龍が祀られている神社へ足を運ぶことが少なくなり、多少力は弱まったものの…
それよりも、人への恨みつらみは日々募っていった。
「貴様ら一族は人への施しが過ぎる。我ら妖が人を食うのは人より上位種であるからだ。連中が牛や豚を食うのと変わらんのだよ」
何千もの蛇は、一体一体が小さめではあるものの徒党を組んで襲い掛かられると厄介だった。
雨竜は腕を組んで楽しそうにしながらも金色の目だけは恨みに歪んでいるのを見て鼻で笑った。
「お前こそ祀られている時は人に憎しみなど抱かなかっただろう。それで人を食ったことはあるのか?」
「…」
乱青龍は沈黙したものの、人差し指をぴっと動かすと、蛇たちは一斉に良夜に詰め寄った。
『おい小僧』
「なんだ」
『我に力を寄越せ。そして横に薙いでみせろ。さすればあれらは消滅する』
「すごい数だぞ」
『太古の時代より存在する我の相手にもならん。さあやれ。すぐやれ』
天叢雲が力を要求すると、良夜は妖気を注ぎ込んで目に青白い炎を燈らせた。
「行くぞ」
『応』
短い息を吐き――はじめて天叢雲に力を注いで、薙いだ。

