「へぇ。俺がいなくて寂しかったわけだ」


「……っ、は、花火が!!!」


「でもま、安心しろ。そんな酷い顔じゃ、ハチも刺さねーから」


「ぬっ……!!」



さっきまで、少しだけ……ほんっの少しだけ甘い空気が漂っていたように感じた気がしたのは私の気のせいだったらしい。


やっぱり大馳は意地悪で、


「で?1人の間にナンパの1つでもされたか?」


「…………」


「良かったな、俺がいて。感謝する必要あるんじゃねぇ?」


「……ムカつく。大馳、生意気」


「お?俺が生意気だってことにやっと気づいたわけ?」


やけに楽しそうに笑う大馳が、スッと勢いよく立ち上がったかと思えば「ほら」と、私に手を差し出した。


「帰るべ」


その手を静かに取って、ゆっくり立ち上がった私は、


「なんで、私がここに居るって分かったの?」


ずっと気になっていたことを大馳に投げかけた。


大馳は少しだけバツが悪そうに頭をかいて、それから……そりゃもう小さな……聞こえるか聞こえないかくらいの声で答えてくれたんだけど。

それでも、私の耳は飾りじゃないからしっかり聞こえたよ。


その言葉は、私の胸を温かくするには十分過ぎて、やっぱり私は大馳が大好きだなって思った。




─── 言ったろ、ぜってぇ茜のこと見つける自信あるって。