「……好きだと思ってた。さっきも、弱ってる美優見て、今がチャンスかもって思ったりもしたし」


「そっかぁ」


やっぱり、美優ちゃんが好きか。

……なんて言うか、こう……本人から直接聞かされると自分が理解していたよりも、もっと奥深くまでナイフをグサッと刺された気分。


まさに、トドメ。


私の隣にストンと座った大馳に、少しだけビクッと肩が揺れた。

シンプルに近い。
だけど、決して触れ合うことは無い。まさに私と大馳の心の距離みたいな、絶妙な距離感。



「なのに」


「……なのに?」


「結局、美優を家まで送ってる途中で"そんなソワソワするくらい気になるなら、なんで置いてきたの?"って怒られて、気付いたら茜と別れた場所まで急いで戻って来てた」



───ドキッ



「美優を慰めるために行ったはずなのに、なんで俺が怒られなきゃなんねーんだっつーの」


静かに私へと視線を向けた大馳の瞳は、暗闇の中でも吸い込まれそうなくらい透き通っている。


「案の定、待ってろって言った場所にはいねぇし、見つけたと思ったら勝手に泣いてるし」



大馳が自分のパーカーの袖口で───グイッと少し乱暴に私の涙を拭うから、一瞬で体温が上昇して、体の奥底から熱がこみ上げてくる。


「だから、これは!花火が綺麗でね!」



慌てて今度は自分のコートの袖口で反対の涙を拭う私に、大馳は得意の意地悪顔でフッと笑った。