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静かな神社の石段に座って、ゾロゾロと帰っていく人波を目で追う。

今年も秋祭りが終わってしまった。


結局、大馳の言いつけを守らず移動してしまったけれど、待っていたってきっと大馳は戻ってこなかっただろう。


独りで見る花火は、切なすぎて見るに耐えなかった。


"花火くらい1人で見れる"なんて、大馳に啖呵切ったくせに、実際のところ寂しくて泣いてたなんて。


大馳の事だ、知られたらあの悪口級の毒舌で馬鹿にされるに違いない。


だから、泣くのはもうおしまい。
学校で大馳に会ったら「すっごい綺麗だったよ」って満面の笑みで言ってやろうと決めている。


「って……バカだな、私」


石段に座ったまま膝を抱えて、顔をうずめながら独り言を漏らした私は、



「本当、バカ過ぎてマジで腹立つ」


───っ!?


聞こえてきた声に、思わず勢いよく顔を上げた。


「だ、大馳!……な、なんでここに?」


少しずつ私との距離を縮める大馳に、心臓が暴れ出す。もう、戻ってこないと思っていただけに、嬉しさと戸惑いが交差する。