毒舌年下BOY♂に愛を叫べ【仮】

人並みの中、はぐれないようにと伸ばした手は、大馳のシャツを掠めて宙を舞う。

どうせ大馳のことだから"怪力でシャツにシワ寄るから離せ"とか言われるかな?なんて、あと少しのところで思いとどまってしまうのだ。


「にしても、すっげぇ人だな」

「……だね。これじゃあもう座る場所ないかもね」

「茜、はぐれんなよ?マジめんどくせーから」

「そういう大馳こそ。迷子にならないでよね」


たまには反撃と言わんばかりに"迷子"なんて、ちょっと子供じみた言い方をしてみるけれど、大馳には何のダメージもないらしい。


「俺と茜がはぐれた時、迷子なのは茜だろ」

「なんでそうなるのさ」

「ぜってぇ茜のこと見つける自信あるもん、俺。見つけてもらった方が迷子だろ?」



───ドキッ


『ぜってぇ茜のこと見つける自信あるもん、俺』


その部分がやけに頭の中をぐるぐる回る。


深い意味なんてないって分かってるけど、片想い中の女子にとって、好きな人の何気ない一言は、実はすんごい破壊力を持っている。