「本木さん、お届け物です」の声に確認してからドアを開けると。

ーーーお届け物は少し前に二人で作ったあのセミダブルのベッドだった。

「東側の洋室に運ぶように指定されていますが、運び込んでいいですか?」
明るい笑顔のお兄さん達は運んできた勢いのままこちらが了解する前にすでにスニーカーを脱ぎかけている。

「あ、はい。お願いします」
見覚えのあるベッドを見て拒否するはずもないのだけれど、これはひと言大和さんに言ってやらねばー。

宅配業者のお兄さんを送り出した後、すぐにスマホを手に大和さんに電話をするけれど、留守番電話に切り替わってしまう。
もうっ。

マットレスのないセミダブルベッド。

あの頃、てっきり大和さんが思い続けてた本命彼女と過ごすためのものだと思っていたものがここにある。

これが”関東支社にとって大事なもの”、ね。

じっくり眺めていると手元のスマホが震え出して大和さんからの着信を知らせた。

「灯里、荷物届いた?」
「届きましたよ。まさかのあのベッド」
「じゃあ、マットレス買いに行こう。駐車場に下りてきて」

え?
「大和さん、いまどこに?」
「下にいるから。早く下りてこいよ」
窓を開けてテラスから見下ろすと、駐車場の定位置に大和さんの大型RV車が停まっている。

大和サン、仕事は?って聞くまでもない。
社長特権で早退してきたに違いないのだから。