冷たいキスなら許さない

「何をって・・・何も」
目を伏せて視線を避けるけど、こんな答えじゃ社長は納得しないだろう。

「腕をつかまれたくらいのセクハラじゃお前なら相手の男をひっぱたくか蹴り飛ばすくらいのことしているはずだ。現に今まではそうしてきたじゃないか。
俺が守り切れなかった言い訳にするわけじゃないが、今夜のお前はおかしかった。・・・何があった」
長い両手でテーブルに手をついて私をテーブルに挟み込む。

私の手には洗い物のお皿とグラス、背中はテーブル、正面には社長の大きな身体。逃げ場ナシ。
近すぎる距離にときめくよりも焦りを感じる。

斜め上から強い視線を感じる。
何も、って答えじゃ絶対に納得しないと態度で表してる。

この目の前の暴君に何をどこまで話す必要があるのだろう。
櫂の彼女のことかキスされたことか?
私のプライベートに踏み込みすぎだと言えば納得してくれるだろうか?

いや、そんな言い方でこの人が納得するはずがない。
今夜は仕事がらみの場で起こった出来事だ。この先の対応が仕事に影響を与えることだって考えられる。