「また櫂の周りをちょろちょろしてたなんて驚きだわ」 西倉恭香は私をじろじろと見ると、 「相変わらず品のかけらもないわね。ドブネズミみたいな地味な格好して。きゃんきゃん吠えるバカな仔犬は成犬にならずにドブネズミになったのねぇ」アハハっと高笑いを始めた。 なんて失礼な。 でも、過去のトラウマのせいで声が出ない。悔しいけれど、反論の一つもできない。 それよりも鼓動が激しく耳鳴りがして息も苦しくなってきた。 やめて。どこかに行って。 俯き、目を閉じて拳を強く握った。