決して結ばれることのない、赤い糸

「隼人、手伝うよ!」


わたしは隼人に駆け寄る。


「ありがとう、かり――」


すると、なぜか隼人がその場で固まってしまった。

停止ボタンを押したかのように、動かない。


「隼人…?」


隼人が固まっている間に、浮き輪はどんどん膨らんでいく。


「なにやってんだよ、隼人。浮き輪が破裂するだろ」


そこへカズがやってきて、空気を入れるホースを隼人から取り上げた。


カズが手際よく空気穴に栓をして、また1つ浮き輪が完成した。

そしてそのまま、隼人の頭を小突く。


「…イテッ!」

「バーカ。かりんの水着姿に見惚れてるからだよ」


カズに小突かれた頭を摩る隼人は、なぜかわたしと目を合わせようとしてくれない。


「隼人、…どうかした?」


顔を覗き込むと、隼人はうつむいた。