決して結ばれることのない、赤い糸

「え…?」

「だって、お母さんはこの16年、ずっとわたしを育ててきてくれた。それは『お母さん』と呼ぶ以外、なにものでもないよ」


お母さんがわたしを引き取ってくれなかったら、わたしは養子に出され、家族という存在も知らずに施設で1人寂しく暮らしていたことだろう。

だから、お母さんには感謝しかない。


「嘘つかれたなんて思ってない。わたしのためを思ってついてくれたうそだって、ちゃんとわかってるから」

「かりんっ…」


涙ぐむお母さん。


「…ちょっとお母さん、ちゃんと運転してよねっ。危ないでしょ」

「わかってる…。大事な娘を乗せて、事故するわけないでしょっ…!」


お母さんは片手ですばやく涙を払うと、ハンドルを握り直した。

それを見て、思わずフッと笑みがこぼれた。


お母さんとの関係は変わらない。