決して結ばれることのない、赤い糸

『かりんは、隼人くんのことが大好きだったんだよね。…つらかったよね。お母さん…なにもできなくて、ほんとにごめんね』


別れるようにと言ったのにどうしてと思ったけど、お母さんもわたしたちのどうしようもない運命を呪って、なにもできない自分に悔しくて泣いたんだ。

あの涙の意味は、そういう意味だった。



その帰り。

運転席に座るお母さんと助手席に座るわたしの間には、会話はなかった。


「…ずっと隠していて、ごめんなさい」


信号待ちのとき、ぽつりとお母さんがつぶやいた。


「この16年、かりんをずっと騙してた。娘に嘘をついて…、こんなお母さん…もう母親だなんて名乗れないね」


お母さんの声は震えていた。

運転をしながら、静かに涙が頬を伝っていた。


「…わたし、本当のことを知ったからって、お母さんのこと嫌いになったわけじゃないよ」