決して結ばれることのない、赤い糸

「…今日は、仕事終わるの早かったんだ」

「うん。そのかわり、明日が大変そうなんだけどね」


苦笑いを浮かべるお母さん。


「そうだっ、ケーキ買ってきたの。今、食べる?それとも――」

「…お母さん」


ケーキの入った小さな箱を冷蔵庫から取り出すお母さんに、わたしは声をかけた。


「どうかした?」


わたしの顔を覗き込むお母さん。

わたしは、つばを呑む。


「…別れたよ」

「えっ……?」


静まり返るリビング。


「わたし…、隼人と別れたよ」


なぜか頬が緩んだ。

それは、お母さんにちゃんと報告できたからだろうか。


『隼人くんとは別れなさい』


前にお母さんに言われてからずっと反発していたけど、ようやくお母さんの言うとおりになったから。


だから、笑って報告することができた。