決して結ばれることのない、赤い糸

優奈には、隼人と別れたことはまだ言えていない。

なぜなら、わたし自身がまだ受け入れられていなかったから。


だれかに口にしてしまったら、認めるしかないような気がして。



少しすると、数学の教科書を抱えた優奈が帰ってきた。


「隼人、ちょうどきたところだったよ」

「そ…そう。…なにか言ってた?」

「なにかって?」

「…いや、べつに。なにもないなら…いいの」


歯切れが悪いわたしを不思議そうに見つめる優奈。


「…ああ、そういえば!よくわかんないけど、『かりんのこと、よろしく頼む』って言われたよ?」

「えっ…、隼人がそんなことを…?」

「うん。今さらそんなこと言わなくたっていいのにね」


事情を知らない優奈は、その言葉の意味について、とくに気にもとめていない様子だった。