決して結ばれることのない、赤い糸

閉会式。


〈優勝、壱葉中学校〉


優勝校の壱葉中学の名前が、マイクを通してグラウンドに響く。


賞状を受け取りに行くのは、サッカー部の3年生の部長さん。

優勝したといううれしさと、これでもう引退という寂しさなのか、部長さんの目には涙が浮かんでいた。


初戦からずっと観てきたから、なんだかわたしも胸から込み上げるものがある。


こうして、サッカー部の夏の大会は、壱葉中学が優勝というかたちで幕を閉じたのだった。



「見て見て!海だよ〜!」


電車の窓から、優奈が指差す。

その先には、太陽の光が反射してキラキラと輝く、青色の海が見えた。


海なんて久しぶりだから、はしゃぐ優奈の隣で、実はわたしも興奮していた。


部活のないお盆休みを利用して、わたし、優奈、隼人、カズの4人で海水浴にやってきた。


隼人の親戚の人が、海水浴場で海の家をやっているとかで。

しかもその人が、近くのコテージも借りてくれたみたいで、今日は1泊2日のお泊まりも兼ねている。



「海の匂いだ〜!」


電車から降りると、潮の匂いが風に乗って漂ってきた。


最寄駅から数分歩くと、そこには人がたくさん集まる海水浴場が広がっていた。

至るところにテントが張ってあって、その間を縫うように浮き輪やビーチボールを思った人たちが行き交う。