すると、隼人は思いもよらないことを口にした。


「俺たち…、前にどこかで会ったことない?」


――わたしの胸がトクンと鳴った。

徐々に鼓動が速くなって、自分じゃ抑えられないくらい。


「ど…、どうしてそんなことを…?」


平静を装いたいのに、勝手に声が震える。

額には汗もにじむ。


「実は俺、中学のときに事故で頭をぶつけて…。それ以来、一部の記憶がないんだよね」


動揺を隠すので精一杯なわたしに、隼人は眉を下げて笑った。


「広瀬さんは、なぜだか初めて会った気がしなかった。だから、俺が忘れているだけで、前に会ったことがあるんじゃないかと思って」


隼人は、わたしと付き合っていたことも、記憶を失くしてから一度病院で会ったことも忘れている。

だけど…、どこかでわたしのことを覚えていてくれていたのだろうか。