泣きたいのを我慢しながら、顔をくしゃっとして笑ってみせる。


「そんなの当たり前だろ。…オレだって、同じ気持ちなんだからっ」


予想もしていたなかったカズの言葉に、わたしはキョトンとした。

泣きそうになっていたのも忘れるくらい。


「…え?それって、どういう――」

「中学のとき…、かりんが隼人に向ける笑顔を見るのがつらかった。でも、隼人のことを想って強がってる今のかりんを見るほうが、…もっとつらい」


まっすぐに、わたしにまなざしを向けるカズ。

それは、今までに見たことがないくらい真剣な表情で。


「さっき隼人の彼女に、かりんのことを彼女か?って聞かれたとき、全力で否定したけど…。ほんとはそうなりたいと思ってる」


まるで時が止まったかのように、わたしたちは見つめ合っていた。