決して結ばれることのない、赤い糸

にっこりと微笑む隼人。


「広瀬さんって、吹奏楽部だったの?」

「う…うん!」


隼人は、わたしが持っていたフルートのケースに目を向ける。


「試合、見てたよ!瀧くん、あのゴールすごかっ――」

「隼人ー!」


その声に反応して、隼人が視線をわたしから遠くのほうへ移した。

そこには、駆け足でこちらに向かってくるショートヘアの女の子が…。


隼人の彼女だ。


「トイレから出たら、バス停の場所がわかんなくなっちゃった…!」

「もう少しくるのが遅かったら、電話しようと思ってた」

「そうなの?慌てて走ってきたから、喉乾いちゃった…。それ、ちょうだいっ」

「おう。あとちょっとだから、全部飲んで」


隼人の彼女は、隼人のバッグのサイドポケットに入っていたスポーツドリンクのペットボトルを引き抜くと、それを飲み干した。