決して結ばれることのない、赤い糸

それと同時に、隼人がスッと右手を前に挙げた。


親指と人差し指を突き立てる、まるでピストルを形作るようなそのポーズ…。


見覚えがあった。


それは、隼人がサッカーの試合でゴールを決めたときに、決まって観客席のわたしに向けてくれていたものだった。


隼人に指差されると、自然と目が合う。


会話の届かない距離だけど、目で合図を送ることができるそのほんのわずかな時間が、わたしは好きだった。


2年たっても変わらない…あのポーズ。


隼人の人差し指の先は、観客席に向けられている。


一瞬…、隼人と目が合ったような気がした。


…もしかして、隼人。

そのポーズの意味も覚えてくれているんじゃ――。


思わず胸が高鳴る。


だけど、目を凝らしてみると、隼人の指先はわたしのいる吹奏楽部の席よりも、少し下のほうを指していた。