決して結ばれることのない、赤い糸

「…ごめん。飛ばしすぎちゃったかな」

「そんなこと…ないですっ。なんとか助かりました…」


隼人が手を引いてくれなかったら、わたしは下校時間に間に合っていなかった。


にじみ出た額の汗を手で拭うと、なぜか隼人がじっとわたしのことを見ていた。


「広瀬さん…だよね?」

「…え……?」


突然、隼人の口からわたしの名前が出てきた。

まさかと思い、わたしの胸がトクンと鳴る。


…もしかして隼人、わたしのこと――。


「入学式のとき、新入生代表で挨拶してたよね。だから、なんとなく顔と名前を覚えてて」


…そうだよね。

隼人がわたしのことを覚えているはずが…ない。


まだ記憶が戻ってないんだね。


わたしは、寂しさが顔に表れないようにした。


「…あっ!俺の名前は、瀧隼人!7組なんだ」