同期の溺愛は素直に受けて正解です

「他になんか言ってた?」

俊貴の硬い雰囲気から圧力を感じる。

「他は何も聞いてない、です。」

変な日本語になっってしまった。

俊貴が怒っている雰囲気だから紗菜もつい動揺してしまった。

さっさと帰りたい。

時間も遅いし。

「他にないなら、とりあえず出るか」

裏の扉を押し外に出る。

紗菜が駅に向かうため左にトボトボと歩き出せば、肩をきゅっとつかまれ無理やり振り向される。

「オレ、今日は車できてるから、こっち」

紗菜の歩く方向と反対を指差す。

「うん、わかった。じゃあ、気をつけてね」

この重い雰囲気のまま駅まで一緒に行かなくてよいことは正直助かった。

ただ、もう並んで歩けない距離を悲しく思う。

「なに言ってるんだ。紗菜も乗るんだよ。飯、まだだろ?食ってから家まで送るから。話もあるし、電車の時間気にしないでゆっくり話そうぜ」

無理やり肩を組まれ引きずられるように近くのコインパーキングまで連れて行かれ、助手席に放り込まれた。

俊貴の車に乗れるのも今日で最後かな。

少しだけ、許してね、陽子ちゃん、と心で呟く。