厨房で今日の仕込みを終わらせ、
ホールに出ると、リュウとおばさんが話していた。
「もう!あの人も、いい加減なんだから、
老人の暇つぶしに若者引き連れちゃダメでしょ。
もう!あんたも高校生なんだから、ちゃんと」
「もー、ちいちゃん厳しいー」
リュウが即席で作り上げたようなしかめっ面でそう言うと、おばちゃんは右手に持っていた帳簿のノートを丸めリュウの頭をバシッとはたいた。
「いってぇ!おばさんやべぇよ!」
大げさに頭を抱えるリュウに向かって
おばさんは呆れたような笑いを向けた。
「困るのはあんた達だからね」
「まーまーまー、今俺らは人生で1番か2番を争う大事なことをしてるから」
軽いノリだけで生きてるような男が『大事なこと』なんて青春映画のセリフみたいな一番似合わないことを言うと、これが意外にも何か心に響くものがあるらしい。
おばさんは感心したようにへぇと言った。
「なんでカッコつけてんだよ」
そう言った俺の声をかき消すように、
店の外からガヤガヤと賑やかな話し声が近づいてきた。