「大丈夫、大丈夫!
おじさんから許可もらったから、お構いなく!」
リュウはいつもの呑気な軽い口調で言いながら立ち上がった。
「お構いなく!じゃねーよ、
お前なんでいるんだよ」
空になったコップを持って厨房に行ったリュウに尋ねると、
「ちょっと色々あってさ、
もうすぐカイトとかセンも来るから!」
リュウは厨房から左手にはコップ右手には水と氷が満タンになったピッチャーを持ち、
自分の定位置の席に座った。
リュウを見ておばさんは呆れたように頭を振っている。
「リュウ、お前のばあちゃん家かよ」
俺がリュウのくつろぎっぷりに呆れて、
そう言うと店の帳簿を書いていたおばさんの手がピタッと止まった。
「ばあちゃん?」
いつもの2倍、いや10倍、
圧のあるおばさんの声に圧倒される。
「いや、あの。はい。
そういう意味じゃなくて…。」
この人、
どう見ても俺らのばあちゃん世代のはずなのに、
頑なにおばさんと呼びを強要している。
もう、
どういうこだわりなのかは俺の理解を超えていて。
しかし、このこだわりを理解することよりも先に俺はなにをすべきか。
それはもう一つしかない。
「いや、あの…。さーせん」
「おばさんね!」
そう言ってうなずいたおばさんは
鼻息を荒げながら立ち上がると、
帳簿や電卓やらを紙袋にまとめて片付けると、
バックヤードに向かいながら俺に言った。
「チカ、ラッキーの世話も頼んだよ」
俺はおばさんの後姿を追うように、
バックヤードに向かった。