この間、
髪を黒にして少し残念そうにしながらも、
佐倉咲は、意外にさっぱりとした表情をしていた。
なのに、今日は暗雲が立ち込めたような、
思いつめた雰囲気を出している。
先生から一度誤解されてしまうと、
その誤解を解くのはかなり難しい。
先生でなくても誰でも、そうなのかもしれない。
人の印象なんてそんなものだ。
一度誤解されてしまうと、
学校生活全体にかなり影響する場合があるのだ。
今日の彼女の横顔を知っているような気がした。
中学のころ、突然学校に来なくなった同級生。
普段明るい人ほど、
突然消えてしまうように来なくなる。
原因は風の噂によると先生だったらしい。
詳しくは知らないが…。
佐倉咲の横顔が、
あの時の同級生の表情と似ていた気がした。
佐倉咲の心配をしていると、
駅員さんの特徴的な声が、
次が目的地の駅名だとアナウンスした。
到着までの暫くの時間に、
ぼんやりと外を眺めようとドアにもたれかかると、
目の前の窓にへばりついた細い雨の雫たちが、
電車の風を切るスピードに乗り、
街並みを背景にして、
泳ぐように同じ方向へ進んでいくのが見えた。