[ akari side ]
腕時計を見ながら、私は走っていた。
時間は4時半。家に帰って、
今日塗るリップを選び少し昼寝をするつもりが、
思っていたよりもしっかり寝てしまっていた。
予想以上に疲れがたまっていたらしい。
駅の広場を横切ると、
かわいらしい茶色いトイプードルがチョコチョコ動き回り、飼い主と散歩していた。
そんなほのぼのした日常を横目に、改札に走る。
電光掲示板を確認し、35分発に間に合うことを確かめて、スピードを緩めた。
電車に乗り込んで、
乗り降り口のドアの前に立ち、
そこから外を眺めていると、
ぽつりぽつりと水滴が窓に叩きつけられた。
雨か。
私はゆっくりとスピードを加速させる電車の中で
窓の外を眺めながら、
佐倉咲のことを心配していた。