[ another side ]
放課後、コンクリ―トむき出しのバックヤードに
北斗軒に早く来たカイトを連れてきた。
元々、段ボールが積み上げられていたバックヤードの片隅を覗き込んだカイトは大きな声で言った。
「チカ、これどこで拾ったんだよ」
カイトが顎で指した先には、
この間拾った子犬のラッキーがいた。
呆れた声で言うカイトをよそに、
俺はラッキーを持ち上げ、
休憩用の丸い小さな椅子に腰かけると、
ラッキーの体を犬用のウエットティッシュで拭いた。
「いいじゃん、かわいいだろ」
俺がそう言っている間も、
俺の膝の上で落ち着きなく、
ヨタヨタと歩き回る犬を指さしてカイトが言った。
「マジかよ、そいつ絶対アホ犬だぞ」
「そんなこと言うなよカイト、
ラッキーは俺が賢くするからな」
落ち着きのないラッキーを抱き上げて、
頭をよしよしよし!と撫でていると。
「チカ、犬にもそれ言うんだな」
そう言うとカイトはあきれた様子で首を傾けた。
「言ったことあったっけ?」
「細かくは覚えてねーけど、お前昔、レオにそんな感じのこと言ってたよ」
「あー、そうだっけ」
2年前の夏、
俺がカイト達と出会ってすぐのころ、
似たようなことを4人に言ったことを思い出し、
二人で顔を見合わせて苦笑した。