近所のコンビニに届いた赤いリップを、
ドキドキしながらお母さんがいない家に持ち帰った。
こっそり自分の部屋で空けて、
鏡の前で唇にのせてみる。
その時初めて自分が女なんだと自覚した。
しかし、何かが足りない。
雑誌、動画、SNSを見て、その時気づいた。
髪の毛が驚くほど地味ではないか。
ブローという言葉の意味さえも理解しておらず。
私は、毎朝髪の毛を櫛で軽く撫でるだけだった。
そう、寝癖なんて治るはずもない。
何なら治す気もなかった。
その時初めて、髪を濡らして乾かし髪を真っすぐにするという、ブローのやり方を動画で知った。
全てが初めてで、容量を得ないものだから、20分もかかって、やっと真っすぐになった自分のショートヘアが完成した。
それでもまだ、何か足りない。
髪の毛の清潔感は出た。
でも、明らかにまだ私のままなのだ。
参考にした雑誌の女の子をもう一度じっと観察する。
もちろん彼女の服のスタイルが飛びぬけて気に入ったから真似をしたのだけれど、
明らかに髪型が…このミルクティーブロンドが、
彼女のチャームポイントとしてこの服装を際立てせていた。
やっぱりそうか…私は落胆した。
一時的な変身だから髪を染めることはできない。
うちの高校、厳しいもん。
学校で染めている人なんて、その時、田中君の噂話を思い出した。