服がここまで私に力を与えるなんて、
そんなこと一度も想像さえしたことも無かった。


駅前デパートのシャネルのショーウィンドウを横目に、変わらぬ足取りでスタスタと歩き去る。

まるで、魔法使いにでもなった気持ちで、

アイディアは調べれば調べるほど出てきた。

夢中になって、
思い付くことすべてを行動に移していった。


だから、雑誌を買った時も、ネットで購入ボタンを押したときも、スマホでメイク動画を見ていた時も、

派手に『変身』をするためであって、
自分自身のためではなかった。


それでも、方法を知るうちに、
実際に鏡の前で変身した自分の姿を想像して、
モノクロだった世界に新しい色が加わっていく。


求めなければ、
誰も教えてくれない世界。


けれどそれは「私がなぜ生きるのか」という問いの答えの一つになりうる事は確かだった。


世の中にこれほど、解きにくい答えのない問題があるのかと、世間知らずの私は心を震わした。


それまでの私は、家でも、学校でも、
勉強をして、人から誤解されないような真面目な格好をしていれば幸せになれる。

そんなことしか、教えられてこなかった。


世の中にこんな幸せの味わい方があるなんて。
そんなの、全然知らなかった。