[another side]



学校が終わり、
北斗軒に向かう足は自然と早くなっていた。

赤いテント屋根が見えると歩いていられず走り出し、その勢いのままドアを押した。


「おばさん!ただいま!ラッキーはどうなった?」

「お帰り、退院は明日だって、それより、そこの洗い物頼んだよ」


そう言うとおばさんはずっしりとしたゴミ袋を抱えて、バックヤードに消えていった。

机から飛び出したままの椅子を、
机の下に戻しながら、店の奥に向かう。

その道中でタイムカードを切って階段を上る。

コンクリートむき出しのロッカールームに着くと、財布から鍵を取り出し、一番奥の上段ロッカーの蓋を開け、制服のブレザーと鞄を押し込めた。


制服のズボンを脱いで、ロッカーに置きっぱなしにしていたジーパンを履くと、体を回し背後につるしてあったエプロンと帽子を取り、機械のようなスムーズさで厨房へ向かった。


皿洗いと、今日の仕込みを終わらせると時計は午後五時を指していた。


そろそろアイツらが来る時間だ。


リ、リリンと軽快なドアベルの音が店先から聞こえた。

「うぇい。よ!チカ!」
「お!セン、一番乗りか」

「え、まじか」

センはスマホを見ながらドカッと一番奥の定位置に座った。

「お、カイト達もうこっち向かってるって」
「なら、チャーハンだな」
「うぇい」