ピストルの音が弾けるように響き、競技が始まった。
そして今年も、体育大会はいつも通り三年生が優勝した。
だけど、何かがおかしい。
それは、普段から立入禁止なはずの屋上に人が居るからなのか、
観客席の女子が応援もせずに静かに見守っているからなのか、
終わるまで分からなかった。
何よりも変だと思ったこと。
それは人垣をよじ登り晴れて旗までたどり着いた、「今年の英雄」が一年生だったということを風の噂で聞いたことだった。
暗い雲の下、冷たい風にさらされる生徒全員に向かってマイクを振るう校長の頼りない声が初めて耳に入った。
「今年も最後まで何事もなく体育大会を終えることが出来ました。えー。今年も三年生が優勝ということで、高校最後の体育大会…」
今までの私なら、必要な事務連絡以外は聞き流していたのに、今日は何かが違う。
なぜだか頼りない校長の声がいつもよりも震えているような気がした。