[akari side]


クラスの場所に戻り席についた時、
最後の競技の招集がかかった。


男子生徒は一気に席から居なくなり入場門に集まる。皆ピリリとした緊張感を顔に浮かべていた。

私の前に座る女子たちの呑気な会話とは大違いだった。

「次 棒上旗取(ぼうじょうはたとり)だって」
「そっか。今年は誰が取るんだろ」
「去年凄かったよね」

「そう言えばあの先輩とはどうなったの?」


「なんだっけ?」


「え?告白するって言ってなかった?」

「そうだっけ?」

どっちが勝ったかよりも、誰が旗を取ったかが注目される。

私に言わせれば誰が取っても、勝っても負けても全部同じような気がする。

こんな勝ち負けなんて適当でいいのに、
みんなにとっては大事なことらしい。


去年も最後の競技の棒上旗取りだけ、
何人も怪我人が出るほど、白熱した勝負が繰り広げられた。

「去年はどっちが勝ったっけ?」
「えーっと…忘れた!ねぇ誰か覚えてる?」

それでも、皆の記憶にはこの程度しか残っていない。

「引き分けだったんでしょ」
「あ、そっかぁ。今年はどっちなんだろ」

私の前に座る女子たちは、これから起こる事を目撃しようと楽しみにしていた。


ふと気になって、目の前の校舎を何気なく見上げた。

景色が少しだけ変わった気がしたからだ。

けれど、そこにはいつもと同じ校舎がでんと建っているだけだった。