社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】

「のどかさん。かわいい名前ですね。」

初対面の男性からそんな風に言われると照れる。

「ありがとうございます。」

私は、極力、平静を装ってお礼を述べた。

会議室を片付け終わった私は、

「では、失礼します。」

と会議室の前で会釈をして、真下さんと別れた。

社長室に戻った私は、修ちゃんに聞いた。

「社長、この後、何かご用はございますか?」

「ん? 特にはないけど、なんで?」

「今、会議室を片付けてましたら、営業の
真下さんが社食やランチできるお店などを
案内してくださるそうなので。」

「……… のどか、行くの?」

「『佐倉』です。社長。
特にお断りする理由もないかと思ったの
ですが、何か不都合でもありましたか?」

「いや、今日は、俺がのどかとランチに行こうと思ってただけだから。」

「『佐倉』です。社長。
では、社長も一緒でもいいか、聞いて
みましょうか?」