「すみません。
みっともない所をお見せして。」

俺が謝ると、浩子さんは、微笑んで、

「恋愛映画で泣けるなんて、感受性が
豊かなんですね。」

と言った。

いや、この映画じゃなければ、絶対に泣いてないし。

俺は、浩子さんをお茶に誘った。

「すみません。
聞いていただきたい事があるんです。」

俺は、のどかとの関係を正直に話した。

映画と似てる部分もあったから、話しやすかったし、浩子さんもそれは熱心に聞いてくれた。

「では、高校生の時から、ずっと思って
いらっしゃったんですか？」

浩子さんが驚いたように聞いた。

「ずっと思っていたというか、
ずっと忘れられなかったんです。
思っていてはいけないという事は、分かって
いましたが、彼女が俺の心の中からいなく
なってくれないので。」

「分かりました。
私から、この話はなかった事にするよう、
父に申しておきます。
早く帰って、彼女を安心させてあげて
ください。」

浩子さんは、そう言ってくれた。

「すみません。」

俺が謝ると、

「謝らないでください。
私は私のために、この話はお断りするので。
もし、このまま私たちが結婚したとしても、
安井さんの心の中には私ではない女性が
住み続けるのでしょう？
私はそんな結婚、したくありませんから。」

と笑ってくれた。

俺は、彼女を家に送り届けて、のどかのもとに帰宅した。