レストランを出ると、俺は浩子さんに聞いた。

「どこか行きたい所はありますか?」

「いえ、特には。」

「じゃあ、映画はいかがですか?」

映画なら、無理に話さなくても、2時間は潰れる。

「はい。お願いします。」

俺は、最寄りのシネコンに浩子さんを連れて行った。


「見たい映画はありますか?」

浩子さんは、話題の邦画を選んだ。

俺は、題名しか知らなかったその映画。

幼い頃に離れ離れになった幼馴染が、大人になり再会して恋に落ちる恋愛映画だった。

ただし、最後は現実に引き裂かれる悲恋だったが。

俺は感情移入し過ぎて、うっかり泣いてしまった。

初対面の女性の前で。

恥ずかしい。