「いえ、そんな立派なものじゃありませんよ。」

「社長、何がおかしいんですか?」

真下が、クスクス笑う俺に不快感を示した。

「いや、真下は手が早いなと思ってたら、
振られるのも早いから。」

お前が、のどかに相手にされてないのが、楽しいんだよ。

「ええ!? 俺、振られたんですか?
また今度って、のどかさん、言ってくれたじゃ
ありませんか。」

「女性の『また今度』は『ごめんなさい』と
同義語だよ。
覚えておくんだな。」

「そうなんですか? のどかさん。」

「いえ、あの、一概にそうとばかりは
言えませんが…」

のどかが、余計な事をバラすなと言わんばかりの目で睨んでくる。

「真下、諦めろ。」

俺は言ってやった。だけど、

「嫌ですよ。
のどかさん、どストライクなんです。
何球、ファールになっても、最後にヒットが
出ればいいんですから、俺は粘りますよ。」

なんて、言うから、

「真下、俺は雇用主として佐倉さんを守る
義務があるんだから、あんまり佐倉さんを
困らせると何らかの対応をせざるを得なく
なるぞ?」

と釘を刺しておいた。