「くくっ
ま、のどかは1年生だったもんな。」

蕎麦屋に着くまでに、大分、のどかとの距離が縮まった気がする。


俺たちは、蕎麦屋に入り、席に座って、メニューを広げる。

「のどか、何、食べる?」

「うーん、天ぷらととろろで迷ってる。」

「じゃあ、両方食べちゃえ。」

「え?」

「すみませーん。
とろろ蕎麦に天ぷら付けてもらえます?
それと、普通の天ぷら蕎麦。」

今までのどかに何もしてやれなかった分、いくらでも甘やかしてやるよ。

「今日は、俺の奢りだから、遠慮するな。」

「え、でも…」

「引っ越し祝い。
蕎麦くらいで遠慮されたら、社長の立つ瀬が
ないんだけど。」

「じゃあ、遠慮なく。
修ちゃん、ありがとう。」

のどかに『修ちゃん』って、呼ばれるだけで嬉しくなる。

子供の頃は、毎日呼ばれてたのに。