社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】

昼を過ぎても、のどかは片付けを頑張ってた。

のどかは、小さい頃から、1つに集中すると周りが見えなくなる所がある。

きっと昼を過ぎてる事も、腹が減ってる事も忘れてるんだろう。

俺は、下から声を掛けた。

「のどかぁ、引っ越し蕎麦、食べに
行かない?」

「はい!」

すぐに元気な返事が返ってきた。

のどかが階段を下りてくる。

「近くに美味しい蕎麦屋があるんだ。
腹減ってるだろ?」

「はい。」

「あ、下駄箱、俺のは左に寄せてあるから、
のどかは右半分使っていいよ。」

俺は、のどかが靴を履くのを待って、玄関を開けた。

そして、持ってた鍵の一本をのどかに渡す。

「これ、のどかの分ね。
平日は使わないと思うけど。」

のどかは怪訝そうな顔をする。