帰る場所をなくした私は、その場に座り直した。

「あれ? どうしたんですか?」

受付の子が尋ねる。

「帰る場所をなくしたので、もうしばらく、
ここにいさせてください。」

私が言うと、チラッと主賓席に目をやり、

「ああ、花木さん!
あれは、ちょっとやそっとじゃ、
動きませんよ。」

と言った。

「どうしてですか?」

私が聞くと、

「彼女、本気で社長を狙ってますから。
私たちのような憧れとは、次元が違います。」

と笑った。

見ると、お酌をしながら、さりげないボディタッチを繰り返している。

修ちゃんもされるがまま、ビールを飲んでいた。

「あれは、潰してお持ち帰りを狙ってますね。」

と受付の子が呟いた。