50メートルを6秒で走る勇者にとってもう勝ちは確定したかに思えた。
全速力で走れば愛しのマイハウスはすぐそこなのだ。

だがそう簡単に返してはくれないのが今世紀最大と言われる台風である。
次の瞬間大粒の雨が降り始めた。

そう。
台風は早く帰らせることを諦めたのだ。
そのかわり雨により今回のミッションを失敗させることを優先することに力を注ぐ事にした。
ドーナツが濡れてしまえば食べられない。
もう最後の一手だった。

しかし勇者は笑った。
待ってましたと言わんばかりに。

「馬鹿め!俺はそこまで読んでいたよ!」

勇者は2重にしてもらっていた袋の一枚を取った。
そしてそのまま上から被せた。

「これでどんなに雨が降ろうと完全防水だ!」

勇者がミスタードーナツで袋を2重にしていたのはこのためだった。
今度こそ勇者の勝利である。

初めは風に負けた勇者だったが最後は雨に勝った。
これでこそ勇者である。

勇者はそのまま無事に帰宅すると神棚に2つのドーナツをお供えしたそうな。


...fin