「……困った」

「……へっ?」

「自分で言って自分で首を絞めてるな」

「………はっ?」

「ピヨちゃん相手だといつもこうだ」

「あ、あの?先生?」

一体いきなりなんの溜め息をボヤキなんでしょうか?

いや、ボヤキという程には表情は特別変化もない無なんだけども。

とりあえず吐き出される言葉だけで『ぼやき』だと判断して、その理由の説明まで音になるのを待ってみれば。

「……ワクワクしすぎて……午後の仕事が怠い」

「………」

「おかしいな。俺はただ宣言した事でソワソワするピヨちゃんを楽しもうと思っただけなのに」

「………」

「とりあえず………帰ったら無茶苦茶にキスしよう……うん」

「………」

「それを活力に頑張るしかないな、うん」

「っ……すみません。そういう葛藤や結論は本人がいないところでしてもらえませんか?」

この人はこれまた真顔でなんていう爆弾を落としてくれるのか。

ぶつぶつと弾き出されるのは本来脳内での一人会議の内容であるだろうに。

『無茶苦茶にキスしよう』とかっ……。

歯磨きして待ってよう。

なんならタブレットかキャンディ舐めて待ってよう。

そういう思考に続く私はどこまで浮れて構えているのか。

まあ、浮れるというのは醍醐味か。

恋というものの……。

だったら、馬鹿みたく浮れて楽しめばいいという事で、


「先生、」

「ん?」

「ミント系と甘い系……どっちが好き?」



私は私で、無茶苦茶にキスされるのを楽しみにワクワクと待っていますよ。


「甘い系で」


帰って来るまで甘いキャンディを頬張って。


先生との初めてのキスに年甲斐もなくワクワクしながら。




【END】